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第42話 七年ぶりの妹

last update publish date: 2026-10-25 12:17:47

第42話 七年ぶりの妹

 美咲が救出されたと聞いてから、実際にその姿を見るまでの十分間は、神崎蓮にとって、これまで経験したどの戦闘よりも長く感じられた。

 M-01の追撃を振り切り、高城たちが確保した退路へ入ってからも、蓮は何度も前方へ視線を向けた。美咲は先に美奈たちと移動していると分かっている。それでも、人影が見えるたびに妹ではないかと思ってしまう。

「走るなよ」

 隣を歩く冬真が言った。

「走ってない」

「今、三回くらい速度を上げた」

「そんな細かいところまで見てるの?」

「お前は分かりやすい」

「今日だけで何回それ言われるんだろ」

 蓮は苦笑した。

 敵の追撃が完全に途切れたわけではない。後方では高城たちが警戒を続けており、M-01が再び姿を現す可能性も残っている。それでも、美咲がいる場所まであと少しだと思うと、意識の半分以上

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    第42話 七年ぶりの妹 美咲が救出されたと聞いてから、実際にその姿を見るまでの十分間は、神崎蓮にとって、これまで経験したどの戦闘よりも長く感じられた。 M-01の追撃を振り切り、高城たちが確保した退路へ入ってからも、蓮は何度も前方へ視線を向けた。美咲は先に美奈たちと移動していると分かっている。それでも、人影が見えるたびに妹ではないかと思ってしまう。「走るなよ」 隣を歩く冬真が言った。「走ってない」「今、三回くらい速度を上げた」「そんな細かいところまで見てるの?」「お前は分かりやすい」「今日だけで何回それ言われるんだろ」 蓮は苦笑した。 敵の追撃が完全に途切れたわけではない。後方では高城たちが警戒を続けており、M-01が再び姿を現す可能性も残っている。それでも、美咲がいる場所まであと少しだと思うと、意識の半分以上がそちらへ持っていかれる。「会ったら何を言う」 冬真が不意に聞いた。「知らない」「昨日から散々考えていたんじゃないのか」「考えてた。でも、実際会うとなると何も出てこない」「謝るんだろう」「それは言う」「それ以外は」「だから分からないって」 蓮は少し考えてから続けた。「たぶん、顔見たら何か出ると思う」「随分曖昧だな」「家族ってそういうもんじゃない?」「俺に聞くな」 冬真の声がわずかに低くなったため、蓮はそれ以上聞かなかった。 やがて通路の先に、人が集まっている場所が見えた。 簡易照明が設置され、その下で美奈が誰かの腕へ包帯を巻いている。高城の部下が数人、周囲を警戒しながら立っていた。

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    第41話 偽物の勇者『境界切断』 人工音声が告げた直後、M-01の剣から放たれた黒い線が、旧実験区画前の空間を一直線に裂いた。 蓮は避けなかった。 正確には、避けるという判断を取る余裕がなかった。 機械が構えを完成させた瞬間、その一撃がこれまでの模倣とは明らかに違うと分かったからだ。切断する対象を大雑把にまとめていた以前の攻撃ではない。蓮が《境界断ち》を使う時と同じように、物質と空間、魔力障壁とその外側を別々に認識した上で、一つの線へ束ねている。「冬真、真正面は無理だ!」「言われなくても分かる!」 二人は同時に左右へ散った。 次の瞬間、黒い切断線が二人のいた場所を通り過ぎ、背後の岩壁へ食い込んだ。 轟音はなかった。 むしろ、その静かさが不気味だった。 厚い岩盤は爆発したわけでも砕けたわけでもなく、最初から二つの別々の物だったかのように滑らかにずれ落ちた。さらにその向こうに設置されていた古い防護板まで同時に切断され、遅れて金属が地面へ落ちる音が響く。 蓮はその断面を見て、思わず奥歯を噛んだ。「……近い」 冬真が問い返す。「何がだ」「俺の《境界断ち》に。威力だけじゃなくて、切り分け方まで近づいてる」 認めたくない。 けれど、否定しても仕方がない。 昨日までのM-01は、境界というものを無理やり引き裂いていた。だから攻撃は強くても粗く、蓮から見れば「似ているだけ」の技だった。 今の一撃には、選別がある。 切るべきものと、切らなくていいものを分けようとしている。 そこまで学んだ。 ほんの数回の戦闘で。「気分悪いな」 蓮

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    第38話 美咲、生存『七年もどこ行ってたの、馬鹿!』 無線機から飛び出した怒鳴り声は、地下坑道の硬い壁にまで反響したような気がした。 神崎蓮は受話器を握ったまま、しばらく何も言えなかった。 声そのものは、記憶にある高校生の妹とは少し違う。七年という時間を重ねた分だけ落ち着きがあり、低くもなっている。それでも、怒る時に最初の言葉だけ一気に吐き出し、その後で自分が何を言うつもりだったのか見失う癖は昔のままだった。 人工的に作られた声を、蓮は一度聞いている。 AIは家族の情報を持っている。 美咲に似せた人型の囮まで作った。 だから、声を聞いた瞬間に「間違いなく妹だ」と思ってしまう自分を、蓮は無理やり押さえた。「……美咲?」『だから誰なのって聞いてるの! 今、自分で蓮兄って言ったでしょうが!』「いや、そうなんだけど」『何が「そうなんだけど」よ! 七年よ、七年! こっちは生きてるか死んでるかも分からないまま探して、ようやく帰ってきたって噂を聞いたと思ったら、AIが家族の声を使って罠を張ってくるし、兄貴らしい人が東京で魔法使ってるとか意味分からない話まで流れてくるし、私がどんな気持ちだったと思ってるの!』 蓮は思わず受話器を少し耳から離した。 高城が横で、小さく笑っている。 冬真も、いかにも興味深そうな顔で会話を聞いていた。「元気そうだな」 冬真が小声で言う。「うるさい」『何? 今、誰かいるの?』「いる。結構いる」『じゃあ全員聞いてるの!?』「たぶん」 通信の向こうが数秒だけ静かになった。『最悪』 今度は声が小さかった。 

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    第37話 勇者と魔王 夜が明ける少し前、山の冷気は昨日よりも強くなっていた。 簡易野営地では、まだ空が青くなる前から人が動き始めている。焚き火は目立つため最小限に抑えられ、温めた水を金属製のカップへ分ける程度しかできなかった。蓮は固い保存パンを口へ押し込みながら、何度目になるか分からない地図を見ていた。 北側坑道。 医療保管区画。 父と母がいる場所。 その外側には、美咲を名乗る短い信号が出た地点もある。 昨日までは、それらを見るだけで身体が先に動きそうになっていた。 今朝は違った。 早く行きたい気持ちは何も変わっていない。それでも、地図を確認し、食事を取り、魔力を整え、剣の状態を確かめることができている。「ずいぶん大人しくなったな」 すぐ隣で同じように保存食を食べていた冬真が言った。 蓮は顔を上げる。「何、その言い方」「昨日までなら、夜明け前に一人で坑道へ向かっていてもおかしくなかった」「俺を何だと思ってるんだよ」「だから、家族が絡むと判断が雑になる男だと言ってる」「それ、もう何回目?」「直るまで言う」 蓮は苦笑しながらパンを噛んだ。「昨日、父さんに怒られたからな」「親の言うことは聞くのか」「高城よりは」「本人の前で言うなよ」 少し離れたところで装備を確認していた高城が、聞こえていたらしく顔を上げた。「聞こえてるぞ」「ほら」 冬真が笑う。「お前、意外と性格悪いな」「意外なのか?」「もう少し無口で怖い魔王だと思ってた」「そ

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